小説投稿インセンティブについて、お話しします

in #japanese7 years ago (edited)

ドーモ

皆さんはこういう場で活動しておられるからして(無駄な言い回し)、「文章で何らかの報酬を貰う」という形式に興味があるかと思われます。
日々の生活情報から、レビュー記事の執筆、役立つ情報に対して対価を得る。
最近ではブロガーなどもそれなりに一般化してきましたね。それだけで生活している一握りの凄い人達と、もう少し副業的な人、趣味、いずれにせよ、多少の報酬を得られる仕組みが出来上がっています。

「無料で公開し、広告などで報酬を得る」

これはyoutubeなどの動画コンテンツにも見られる現象ですね。

今回はその中の一つである、小説について、お話しします。
みんな、小説って知っ…じゃなくて、

今、ブロガーで稼いでいる方々は生活情報やガジェットレビューなどでアクセスを取っています。では、小説でこういった広告収入を得る事は可能か?

結論から言えば否です。
ほぼ不可能と言っても良いでしょう。

何故か? と言えば、個々で独立しているブログや、このSteemの様な投げ銭機能のある場所とは違い、小説の投稿サイトは、基本的に無収益前提のサイトだからです。

一部のファンを多く抱えた…例えばpatronの様なファンによる応援サイトならば、ある程度の収益を得る事ができます。
この形式を使って国内で恐らく最も稼いでいるのはニンジャスレイヤーです(タダオーン!)
こちらは、月額マガジン形式である「note.」で行われています。Twitterでの更新は今も無料ですね。
https://diehardtales.com/

でも、これも長い長い下積みの上でファンを獲得した為に生まれた成功です。
2010年に連載を開始、2012年に書籍化するまでは完全に無収益でしたし、note.でのマガジン方式が開始されたのは2016年の事です。
6年をかけてファンを育成していたのです。並大抵ではありません。そして、web小説界隈でここまで派手に、出版社からの印税以外の方法での収益化を目指しているのは、私が知る限り、ニンジャスレイヤーの翻訳をやっている、杉ライカ氏と本兌有氏だけです。

ファン無しでゼロからスタートとなると、収益化までそれなりに時間がかかります。
投げ銭という選択肢もありますが、これも、チップ文化のない日本ではあまり浸透していません。

日本の創作界隈にありがちな清貧信仰、というのも一部なくもないのですが、大枠で言ってしまえば原因はそれではないですね。
そもそも、Web小説の投稿サイトで最も盛り上がっているサイト「小説家になろう」が、そういった収益を得られる機能を一切導入していない。
そして、運営会社ヒナプロジェクトの方針から言っても、今後そういった機能が導入される可能性は無に等しいのです。
現在、覇権を握っている投稿サイトが「無料・無償・無収益」である以上、ユーザーはそれに慣れており、「出版社に目を付けてもらって書籍化し、印税や原稿料を貰う」以外の方法での収益化は考えられていません。

今のweb小説の扱いが、いわゆるフリーミアム的な立ち位置…
 つまり、

アマチュア作家がwebで小説を投稿する

それを読んだ人の中にファンが生まれる

出版社がそれに目をつけて出版する

ファンが書籍を買う

出版社は高確率でペイできる

ファンは自分の応援していた作品がプロ入りして嬉しい
出版社は収益が出せて嬉しい
作者は自分の作品が商業に認められて、印税が入り、しかもプロの作家を名乗れて嬉しい

という仕組みによってなりたっており、投稿自体には一切の報酬がない、というのが普通なのです。
現状はこの仕組みによってweb小説界は形になっているのです。
現状の頂点である「小説家になろう」がこの構造で動いている以上、今の状態では投稿報酬・広告収入などは決して得られません。

そこで、他のサイトに目を向けてみましょう。

投稿に対して何らかの報酬を支払おう、という仕組み自体は、既に成し遂げているサイトがあります。
それが(株)アルファポリスの運営する「アルファポリス」です。
https://www.alphapolis.co.jp

こちらは人気の作品に対して、人気度合いによって報酬を支払う、という形式で運用されています。
過去には、そう、あの有名な某大物youtuberの作品で少し話題になりましたね。
あれは少し違うのですが、アルファポリスの名が世間に知れ渡った一つのきっかけと言えるでしょう。

このサイトの運営をしている(株)アルファポリスはweb小説界の古参で、早い時期からインターネット上の創作物を商業化、つまり出版する事に前向きでした。
古くは「今、会いに行きます」の市川拓司先生を商業デビューさせ、最近では「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」などでヒットを飛ばしており、今のweb小説の盛り上がりを誰より早く見つけて動いた企業です。

しかし、近年ではKADOKAWAとその子会社軍団のパワーや方針の違いには勝てず、長年の付き合いであり稼ぎ頭だった「小説家になろう」と半ば決別した状態となっており、かつてに比べれば業界内での知名度は低下しました。アルファポリスの理念自体が、今の業界の流れに合わなくなってきているのです。
それでも、長年web出版社として戦ってきた会社である事に間違いはありません。

このサイトでは、トップクラスの作者であればちょっとした副業程度の収益が手に入るそうです。

次に、投稿報酬を導入予定の「ノベルバ」です。
https://novelba.com

こちらはアプリ開発会社である(株)ノベルバの運営しているアプリです。
まだ導入予定ですね。

面白い所では、自前で用意した広告を掲載できる「作家生活オンライン」
http://www.kaitayo.com

こちらもユニークな試みです。

最後に、というか、これが主題なのですが、
ここ最近に開設されたばかりの出来立てほやほやのサイト、
「KAKUZE」です。
https://kakuze.net

discordは
https://discord.gg/hVtvtkb

こちらは、作品の投稿に対して仮想通貨(ETHトークン)「INZEI」を配布しよう、というプロジェクトです。
ここもまだ、テスト稼働が始まったばかりですね。
まだ投稿報酬はなく、肝心のINZEIもプレセール前でAirdrop段階です。
ただ、仮想通貨を投稿の報酬として使う、というのは面白い試みですね。

今の所は一歩目を進んだ段階、という状態ですが、プロジェクト開始からサイト開設までは素早く動いています。

上記の物とは多少異なりますが、ニンジャスレイヤーの説明でも引き合いに出した、「note.」
https://note.mu

これは「patron」などの月額課金サイトの文章特化版で、ここ最近生まれたサイトです。
小説界隈はそこまで盛り上がっていませんが、それ以外のエッセイや日記なども多くあります。
例えば、ガジェット界隈では有名なスマホマニアの山根博士もここで月額マガジンを用意していますね。

大分異なりますが、Amazonの有料制度の一つである「kindle unlimited」による収益化を進めている作者の方もいます。
これは月額980円で対象の電子書籍が読み放題、というサービスで、自費出版をした方の作品も対象にする事ができます。読まれれば読まれるほど、Amazonから報酬が支払われるそうです。
最も近い道はこれですが、今回の趣旨からは少し外れますね。

ここまで書いてきましたが、私の知る限りでは、今はまだ「アルファポリス」以外のサイトは実働していないに等しい状態です。
ある意味ではAmazonのkindleでの自費出版がギリギリ掠る程度でしょうか。
これからが注目どころですね。

締めに一つ、投稿報酬、という形式に対して、デメリット……というよりは、よくない部分です。

これは、投げ銭系の仮想通貨にも言える事ですが、「投げ銭する」という行為そのものが目的になりがちです。
ブロガーは読者がいないと広告収入が得られない、投げ銭も、投げてくれる読者がいないと投げられない。
そこを忘れて、ただ「報酬が得られる!」という大きく見えるメリットばかりを見せびらかせば、待っているのは、読者が離れていくという結末です。

投稿報酬を謳えば、書き手は多く集まるでしょう。
金銭を得られるかもしれない、というのは大きなメリットです。
しかし、そんな機能は読み手、読者にはどうでもいい機能でしかないのです。

最近では、読者に対して感想への報酬などで集客するサイトもありますが、これだけでは効果は少ないと思っています。

基本的に、大多数の読者は報酬が欲しくてサイトを使ったりはしません。そういう報酬などを求めて何かをするのは「義務的でメンドクサイ」からです。
そうでなければ、国民みんなポイントサイトを通して買い物をするし、公務員以外はちょっとした副業をやりますし、アンケートサイトへ登録して毎日回答しますし、仮想通貨のAirdropにネットユーザーの大半が参加するでしょう。

実際に手を出して、ちょっとした報酬を貰っている方々は
「簡単じゃないか」「こんなにすぐできるのに」「めんどくさがるような事か?」と思われるでしょうが、そうではありません。
興味のもてないサイトを利用する為に、何か一工程でもやるのはめんどくさいのです。

「仕事でもないのに、ちょっとした報酬欲しさで何かをする」というのは途方もなくめんどくさいのです。
ちょっと登録しただけでノーリスクで一か月分の給料くらい貰えるなら誰だってやると思いますが、
500円くらいの為にやろう、って人はそう出ません。

ネット小説の読者にも同じ事が言えます。作品内容もサイトも、めんどくさいな、と思われたら終わりです。

読者は、自分の読みたい作品があるサイトを使います。自分の見たい情報のあるサイトを使います。
自分が好きになった作品や応援したい作品、趣味の悪い人なら嫌いな作品などがあるサイトへ行き、
「この作品面白過ぎ! 感想いいっすか」とか「まだこんな作品書いてるの?」とか
感想を書いたり、作者と交流したり、そういう好きで楽しい事をやりたいからサイトを使うのです。
決して報酬が欲しい訳ではなくて、楽しい事を愉しくやりたいだけなのです。

報酬を表に出すより、そのサイトを使うことでどんな「楽しさ」が提供できるのか、それを作り出していただきたいものです。

作者・読者、両方にとって気分の良くなる様なサイトを作っていただきたいですね。

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